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京都家庭裁判所 平成4年(少)3214号 決定

少年 T・K(昭50.7.7生)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は、A、B、Cらと共謀の上、平成4年10月21日午前4時30分ころ、京都府船井郡○○町○○××番地C方居宅離れ内において、D子(当17年)を強姦しようと企て、少年において、同女を押し倒し、さらにその手足を押さえつけるなどの暴行を加え、Cにおいて、同女のトレーナーやスカートをまくりあげてストッキング及びパンツを無理やり脱がせた上、「じっとしとれ。」と申し向けて同女の顔面を平手で殴打する等の暴行脅迫を加え、同女の反抗を完全に抑圧した上、C、Aが順次強いて同女を姦淫したものである。

(法令の適用)

刑法177条

(処遇の理由)

本件非行は女子高校生を深夜呼び出した上、共犯者らとともに輪姦したという極めて反社会性の強い事案であり、本件によって被害者の被った精神的苦痛は察するに余りある。本件は、少年がたまたま知己の女子高生を呼び出したことが契機となっており、姦淫現場でも少年は「T・K(名のみ)助けて。」と泣き叫ぶ被害者をA、Cらの姦淫するにまかせ、あまつさえ被害者の手足を押さえつけるなどしており本件における少年の責任は重大と言わざるを得ない。

少年は資質的には能力、性格両面で特に大きな問題や偏りが認められないものの、気弱で主体性を欠いており、自己主張ができにくい性格である。また、異性観についても極めて未熟な段階に止まっている。そして、本件当時少年は、住み込み就労先を辞めた後自宅に戻っての徒遊状態にあり、さらに家庭的に落ちつきにくい状況にあったことから、地域の不良と接触をもつに至り、その依存的な性格から、有機溶剤濫用を媒介に不良交遊に従属的に組み込まれてしまっていたものである。

本件においては、少年が被害者を呼び出す等、要所要所で少年の果たした役割は大きく、それは言うことをきかないと共犯者のAから暴行を受けるという恐れが主たる動機になっているものの、同時にAらの期待に応え顕示的に振る舞おうとしたという面も否定し難いところである。

したがって、少年は今後、本件の重大性及び自己の依存的なあり方が不良交友に結びつき、結局極めて反社会的な本件非行に至ったということについて十分に内省を深めていく必要があるというべきである。そして少年がこれらの点について内的に受け止めて、現在の悔悟、反省を体験として深め、同時に健全な異性観を涵養するためには、専門的、系統的な矯正教育を受ける必要があり、そのためには少年を少年院に収容保護する必要があると言わなければならない。

しかしながら、少年は本件当時既に大変なことをしているという問題意識をもっていたことから、姦淫行為まではしなかったものであるし、初発非行である本件後は自発的に不良交友を絶ち、就労中心の生活を再建しており、逮捕以後も悔悟や自責の念を強めているところである。また少年の父母もいち早く被害者に対する示談交渉に着手するなど、健全な良識を備えており、監護意欲も十分にある。これらの少年に有利に酌むべき事情に加えて今回の収容の主眼は本件に関する反省を体験として深めさせ整理させることにあることも併せ考えれば、開放的な環境下での短期集中的な矯正教育でも十分な効果が期待できると思料するので、特修短期処遇の勧告を付することにする。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して少年を中等少年院に送致することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 田代雅彦)

処遇勧告書〈省略〉

〔参考〕 少年調査票〈省略〉

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